カーボンクレジット市場は、企業や政府がCO2排出削減の目標を達成するために、カーボンクレジット(排出削減量の証明書)を取引する仕組みです。大きく分けて、コンプライアンス市場(CCM)と自発的市場(VCM)の2つがあります。今回は、それぞれの市場の現在の状況と将来性について、具体的な数字と将来の予測を交えながら解説します。
自発的カーボンクレジット市場(VCM)とは?
VCM(Voluntary Carbon Market)は、企業や個人が自主的にカーボンクレジットを購入し、CO2排出をオフセットするために使用する市場です。規制の義務がないため、「ネットゼロ」目標を持つ企業が自主的に参加しています。最近の需要増加により、VCMは急成長しています。
現在の状況
•2021年の市場規模: 約10億ドル($1 Billion) 。
•主要取引所: VerraのVerified Carbon Standard(VCS)が主導しており、VCMの80%を占めています 。
https://www.ecosystemmarketplace.com/publications/state-of-the-voluntary-carbon-market-report-2023/
将来性
•2030年の予測: VCMは2030年までに100億〜400億ドル($10-40 Billion)に成長すると予測されています 。
•2050年の予測: 将来的には最大で1,800億ドル($180 Billion)に達する可能性があります 。
VCMの特徴
VCMは企業が自主的にCO2削減を目指すため、プロジェクトの多様性や購入するクレジットの選択肢が豊富です。特に森林保全、再生可能エネルギー、クックストーブなどのプロジェクトが多く、社会的共益を重視するプロジェクトが増加しています。
コンプライアンスカーボンクレジット市場(CCM)とは?
CCMは、各国政府や国際機関が法的に規制する排出取引市場です。企業は法的な排出枠に従い、カーボンクレジットを購入して自社の排出量を補填します。EUの排出取引制度(EU ETS)が最も大規模なCCMです。
現在の状況
•2021年の市場規模: CCMの市場規模は約2,610億ドル($261 Billion)で、VCMを大きく上回っています 。
Carbon credits: Scaling voluntary markets | McKinsey
将来性
•成長率: CCMは、今後も安定的に成長すると予測されます。特に、政府がより厳しい排出規制を導入することで、カーボンクレジット取引の需要が拡大していくと考えられます。
CCMの特徴
CCMは政府や国際的な機関による法的な枠組みに基づいて運営されているため、取引の透明性が高く、カーボンクレジットの品質も厳しく管理されています。CCMは現在、再生可能エネルギープロジェクトやエネルギー効率化プロジェクトが中心です。
まとめ:VCMとCCMの将来性
•VCMは急成長中で、2030年には最大で400億ドルの規模に達する見込みがあり、企業の自主的なカーボンオフセットの需要が拡大しています。
•CCMは、政府の規制強化に伴い、安定した成長が期待されています。現在はVCMより大規模ですが、VCMが急速に追い上げている状況です。
これからのカーボンクレジット市場は、持続可能な社会を実現するための重要な要素であり、企業や政府の環境目標達成に向けた中心的な役割を担っています。
参考
Carbon credits: Scaling voluntary markets | McKinsey
2023 State of the Voluntary Carbon Markets Report - Ecosystem Marketplace